集中講座 〜演劇を楽しむために
フィリップ・ゴーリエ 演劇ワークショップ Vol.3
  <チェーホフ>−
 私は反抗することを教えているのではない。
違う方向から見る方法を教えているのだ。
例えば、夜明けのふくろう。
そのふくろうは、いつでも昇って来る太陽と照らされる地球との間で悩んでいる。
このふくろうはどこを見ればいいものかわからないので、いつでもこうしてつぶやいている。「もし、私が昇る太陽だけを見ることにしたならば、おそらく牛がその太陽に照らしだされる瞬間を見ることができない。けれど、もし、私がその牛だけを見ることにしたならば、早朝の光の美しさを見逃すことになるだろう。」
私が教えているのは、いつでも、どこか、なにかからやってくる目で見ることが不可能なもの、もっとさらなる遠くのイメージ、を見る方法である。

フィリップ・ゴーリエ

詩人・劇作家・演出家・俳優
1943年パリ生まれ。
ジャック・ルコック国際演劇学校卒業。
'71年〜'80年ジャック・ルコック国際演劇学校教授。
'90年ロンドンでフィリップ・ゴーリエ演劇学校創設。
現在はパリ・フリップ・ゴーリエ演劇学校校長。
サイモン・マクバーニー以下テアトル・ド・コンプリシテのメンバーや香港劇場組合などに大きな影響を与え、世界各国でワークショップを行っている。


講師アシスタント : 宮崎道子(フィリップ・ゴーリエ演劇学校講師)、伊藤 大(青年座)

日時他

日程 2004年7月27日(火)〜8月7日(土)
(8月1・2日休講/全10回)
月曜〜金曜 11:00〜17:00(休憩1時間含む)
会場 【7月27日(火)〜8月5日(木)】 東京芸術劇場大リハーサル室
〒135-0004 東京都江東区森下3-5-6
TEL 03-5624-5954
【8月6日(金)・8月7日(土)】 日本大学芸術学部中講堂
〒176-0005 東京都練馬区旭ヶ丘2-42-1
受講料 55,000円
募集人員 30名
本ワークショップは終了いたしました。
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お問い合わせ
劇団青年座 〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-53-12
TEL:03-5478-8571 FAX:03-3465-0335
主催 (社)日本劇団協議会
〒160-0002 東京都新宿区新宿3-35-5 新宿O.Tビル3階 TEL 03-3341-8151 FAX 03-3341-8844
製作 劇団青年座
助成 平成15年度文化庁芸術団体人材育成支援事業
財団法人ゼゾン文化財団
協力 日本大学芸術学部演劇学科

報告 伊藤大

 2001年に引き続き、今年の夏もフィリップ・ゴーリエ氏をお迎えしてワークショップを行いました。一般の観客の皆さまとは直接の関係はないワークショップではありますが、今回は私たちが自分たちの活動の一環として、どのように切磋琢磨し心身の技術向上をはかっているか、ご紹介してみたいと思います。
 ゴーリエ氏はパリにあるルコック国際演劇学校の卒業生で講師も長く務めた方です。この学校はそのユニークな教育メソッドと、創造性豊かな卒業生たちの顔ぶれから特に近年熱い注目を浴びるようになりました。その特徴は多岐に渡るのですが、あえてまとめれば〈身体〉とオミットされてきた〈演劇の真実〉への注目、ということになります。
 欧米では〈スタニスラフスキー・メソッド〉という演劇教育法が圧倒的なスタンダードとして確立しています。〈心理〉に着目し、演技上の〈心理〉が現実の〈心理〉の再現であるようにするための方法を構築したもの、といえるかと思います(〈身体〉へも着目はしていますが)。そして、そうした現実の反映である演劇を真に芸術的な演劇とし、いわゆるスター芝居、芝居がかった芝居等は、芸術の名に値しないものと低く見られる風潮が一般化しました。これは日本でも同じです。
 しかし、ここで置き去りにされた〈身体〉や、いわゆる低い芝居の中に〈演劇の真実〉がある――これがルコックのコペルニクス的大発見でした。例えばその一つが今年のテーマでもあった「メロドラマ」です。これは19世紀後半にあったフランスの大衆演劇です。フランスの、などといっても文化の香りなどとはあまり縁がありません。日本でも大衆演劇というと各地の演芸場に旅回りの一座が巡演してきたりするものを思い浮かべますが、ほぼ同じものです。ああいう芝居を、いわゆる現代演劇で作ることはありません。でも、今でも熱狂的なファンがいる。ということは、現代演劇が忘れた〈演劇の真実〉があるはず――それを見出し、あざやかに展開してくれたのがジャック・ルコックだったのです。そして、表現の可能性を限界づけていたものを取り払い、自由な表現へと向かわせてくれたのです。
 今年のもう一つのテーマであった〈シェークスピア〉は、そうした自由な表現への里程標を置くものでした。参加者たちが、〈シェークスピア〉のテクストに自由な発想でアプローチし、表現する。そんな実験に立ち会うことができました。
 ゴーリエ氏は、このルコックの方法を、もう一つひねってさらに自分の軸で展開させるとても優れた演劇講師です。この人の目はいつも暖かい。決して人を否定したり排除しない。ワークショップなどについ熱心になりすぎて〈心理〉〈身体〉マニアになると忘れがちな、〈人間〉から始まるのが演劇だといつも思い起こさせてくれる人です。
 この成果が皆さまの前に現れるのには少し時間がかかるかと思います。が、そのときは大きな花を咲かせてくれることでしょう。どうぞ楽しみにお待ち下さい。